「大丈夫! すくすくのびたよ自閉っ子」を読んで
    


 竹島さんの高著を早々にお送りいただきありがとうございます。本
を読んでの私の拙い感想を書かせていただきます。

 まず、本を読み終えて感じたことは、この本を診断がついた直後の
幼児の保護者に勧めたいということです。もちろん、竹島さんが書か
れているように自閉症を知らない方にも読んでもらいたい内容ですが、
自閉症の保護者の方に出会った時にまずお勧めしたいと思いました。
診断を受けてから次のステップに進み、前向きに子育てに取り組んで
行く竹島さんの姿勢が母親としての気持ちを交えて書かれている内容
は、診断を受けて間もない時期にあり障害を否定したくなっている親
御さんの背中を押してくれるような気がします。沈み込んでいる自閉
症の子どもの保護者に勇気と希望を与え、保護者が進むべき道を示し
てくれる本だと思います。

 この本の中では、生活の中でのスキルの教え方がスモールステップ
で具体的に書かれており、保護者にとっては何よりもありがたい道しる
べになるのではないでしょうか。自閉症の特徴を説明する保護者向け
の本はたくさん出ていますが、ここまで自閉症の特性に合わせて生活
スキルを教えていく方法を教えてくれる本はこれまでなかったと思い
ます。私は、自閉症の特性に合わせた生活指導書、育児書が必要だと
痛感していました。これまでは、専門家が書いた障害に関する説明や
学校の先生のための学校の中での指導方法などに関する本の中から
選んで、保護者に紹介していたことが多かったのです。ところが保護者
のかゆいところに手が届く本はなかったように思います。この本は保
護者が最も知りたいところ、支援者が最も伝えたいところを書いた本
だと思います。

 それから、自閉症の子どもの支援者にもこの本を是非読んでもらい
たいとも思います。とりわけ、作業療法士、保育士、教師には読むこと
を勧めたいです。本の中に出てくる日常生活スキルの指導は、私たち
作業療法士や教育者が毎日悩みながらやっていることです。さすがに
竹島さんは養護学校の教員であったこともあり、深い洞察のもと桃子
ちゃんに合った方法でそれをスモールステップで指導されていていま
す。これは自閉症の子どもの支援者にとっても大変参考になるもので
す。読んでいて気づいたのですが、この本は他の自閉症の子どもの専
門指導書と違う良さがあるようです。それは子育ての中での失敗談が
しっかりと書かれており、竹島さんが試行錯誤しながら最も桃子ちゃ
んに会った支援方法を見出していくステップが生き生きと描かれてい
るところです。支援者が読む自閉症の子どもの指導書の多くは、成功
談を基にして決まった方法が紹介されることが多いようです。この本
のようにやってみた方法で上手く行かないこともあることが偽りなく
描かれているものはこれまでの指導書にはなかったように思います。
そのような生活の中での親の生の取り組みが見えるからこそ、この本
の中に書かれている竹島さんのかかわり方がすっと頭の中に入ってく
るとのだと思います。
 竹島さんが書かれている数々の失敗談を自閉症の子どもの保護者
が目にすると安心するのではないかと思いました。多くの保護者は生
活の中で一般の育児書などの定型発達児の子育てに関する情報を頼
りに子どもに生活スキルを教えようとして失敗し、途方にくれているこ
とと思います。そのような保護者が竹島さんのチャレンジを読むことで、
上手く行かなくても、あきらめずまた次に工夫してやってみるという
姿勢を学ぶことができると思います。
 失敗をもとに自閉症の子どもの特性を踏まえてもう一度やり方を考
え直すという方法は自閉症支援の中で最も大切なことだと思いますが、
この本はそれを保護者や支援者にわかりやすく伝えてくれていると思
います。

 この本は、自閉症の子どもの子育てや支援の基本的視点を教えてく
れるだけでなく、子育てに役立つ情報が満載であることも大きな特徴
であると思います。
 竹島さんのスモールステップの指導が、桃子ちゃんの発達と共に細
かくかかれていますので、自閉症の子どもを持つ保護者が、自分の子
どもの発達と本の中に出てくる桃子ちゃんの発達に照らし合わせ、桃子
ちゃんのある時期の発達段階からの竹島さんのかかわりの方法を自分
の子育てに応用できることがあるのではないでしょうか。日常生活ス
キルの獲得に関して細かく具体的指導が書かれているため、自閉症の
子どもの保護者にとっては、ありがたいヒントが盛りだくさんだと思
います。
 自閉症の子どもの保護者にとって、周りの人への説明の仕方や関係
のとり方をどのようにするのかというのは必ず出てくる悩みの一つで
す。仮に周りの人たちに自閉症の子どものことを説明する必要がある
と専門家から聞かされても、説明することにためらいがあったり、説
明の方法がわからなかったりしてなかなか上手くできないものです。こ
の本の中には、周囲の人への働きかけ方、関係機関をどのように活用
していくのかが具体的でわかりやすく書かれていますので、これを読
んだ保護者には大きな助けとなると思います。他の保護者への説明の
文書が載っているのはありがたいことだと思います。また、随所に悩
んだら支援者に意見を聞くということが実際の例で書かれているので、
そのような周囲の人に相談することの大切さが伝わってきます。

 本の中で感覚統合の話をご紹介いただいているのは、ありがたいで
す。もちろん桃子ちゃんの発達には感覚統合療法以外の支援方法も奏
功していると思いますが、桃子ちゃんの手の使い方の発達や三輪車に
乗ること、服をたたむことなどいろいろなスキルの基礎となる機能の
発達に感覚統合療法が役立ったのではないでしょうか。感覚統合は、
様々な領域の発達を下支えしていますので、その発達を促す指導を取
り入れたことで、運動面以外の発達にも良い影響があったのではない
かと思います。感覚統合療法を提供している立場からは、自閉症の子
どもにはできるだけ早い時期から感覚統合療法を受けて欲しいと思っ
ています。この本を読んだ保護者がその必要性に気付いてくれるので
はないかと期待しています。

 桃子ちゃんの対人関係の伸びに関する内容を読ませていただいて、
早期に気付いて的確な指導をしていけば、こんなに伸びるものなのか
とびっくりしました。おそらくこの本を読む他の支援者も同じ思いを
抱くことでしょう。この本は早期の気づきと早期からの適切な支援の
大切さを伝えるものでもあると思います。
 今後も桃子ちゃんの子育ては続いていくことになりますが、桃子ちゃ
んの育ちと竹島さんのかかわりについて是非ご報告して欲しいもので
す。

 自閉っ子を持つ親である私は、この本を読んで勇気をもらうことが
できました。それと共にもっと早い時期にこの本に出会えたらよかっ
たと思いました。桃子ちゃんのほうがうちの息子よりも年下ですので、
不可能な話ですが・・。
 私の願いは叶いませんが、まだ小さい自閉症の子どもを持つ保護者
に勧めていくことはできますのでやっていきたいと思います。

 大変貴重な本をありがとうございました。

                         平成20年4月27日
                      長崎大学 岩永竜一郎