活かそう! 発達障害脳
――「いいところを伸ばす」は治療です。――
長沼睦雄 著
はじめに
――『障がい』ってなぁに?――
私は生来の気質として、「好奇心旺盛で、新しもの好きで、想像力豊かで、衝動性が強い」という特性を持って生まれたらしい。
恐らくそのために臨床途中で基礎研究に没頭したり、障がいを持つ子どもを授かったのを契機に障がい臨床に移ったり様々な仕事をしてきた。「社会性は弱くても好奇心とこだわりがある」気質を、「組織に縛られないで自分なりに精一杯生かしてきた」からこそ、今日の自分らしさがあると思っている。
発達障がいを持つ子どもたちの診療や療育のなかで、「マイペースでのびのびと自然な自分を出せたこと」で、「発達障がい特性をいっぱい持っている自分」を発見することができた。
その自覚があったからこそ、それを仕事に生かして独自な診療や親身な相談ができたし、忙しさの中にも生き甲斐を感じて頑張ることができたのだと思う。
人の持つ「能力」とはなんだろう?
能力とは、出して使って感じてみないと、わからないし見えないし伸びないものである。能力には計れるものと計れないもの、主観的なものと客観的なものがあり、予感・直感などもまた、能力である。
脳から説明すると、能力(脳力)とは前後・左右・上下・内外などの脳機能の組み合わせとバランスで成り立っている。そして、そのどこかに弱いところがあると他の部分の力が強まる。
脳は外的環境や内的環境から過剰な刺激が入らないように、「意味」というフィルターで護られている。入力情報に「意味」をつけることで刺激をより分けている。
発達障がいのある人の場合、ここがうまくいかないことが多い。
では発達障がいを語るときの「発達」とはなんだろう?
発達とは、遺伝的要因と環境要因(対人関係)の相互作用に影響され、節目・変わり目がある。その機能は遺伝子によって決められているが、どの機能がどの程度に発現するかは環境や人の刺激による。
そして、実はこの環境というものの見え方・感じ方・捉え方も個人の脳の持つ力によって決められていて、外に見える環境は内に抱く環境の現れ(投影)でもある。
ストレスが処理不可能なレベルになるとき、内と外、二つの環境が分離(解離)する。
では、発達に障がいがあるとはどういうことだろう?
それには二つある。「発達のさまたげになるもの」と「そのために生じたダメージやトラブル」の二つだ。
そしてその要因には、器質的要因と心理的要因がある。
身体や精神や脳などに機能の障がいがある人もいれば、家庭や学校や社会などの環境に障がいがある人、自分という認識、自信、自尊心などの主体性に障がいがある人もいる。 障がいとはさまざまな能力における遅れと偏りとゆがみ(凹凸)であり、その現れでもある。
種類や内容や程度の違い、時期や持続や変化の違いはあっても、人生において障がいを持たない人はいない。
そう。広い意味で障がいを持たない人はいない。
だから言いたい。障がいを持つことは恥ずかしいことでも隠すべきことでもない。
人は何かを得れば何かを失い、何かを失えば何かを得る。
人は弱さや苦脳を持つがゆえに、人の痛みがわかり仲間を作って助け合い成長していけるのだ。